魚トの神 2号店(魚トの神府中が1号店) 北野さんインタビュー

 

オーナーで料理人の北野さん。料理の世界には30歳で飛び込みました。料理人としての遅いスタートを取り戻すため、同僚が帰ったあと深夜に1人修行しながら多くのことを吸収し、36歳で独立、2018年に東京の府中に海鮮居酒屋の「魚トの神」をオープンしました。

 

それから2年。売上は順調に伸び、「ここで働きたい」という人が増えてきたことをきっかけに、立川で2号店を立ち上げることに踏み切りました。東京の内陸部、多摩地区に魚の美味しさを広げたい。その思いから始めた自身のお店がこうして徐々に仲間を増やしてきました。その本当の理由とは?


立川駅前、2号店オープン直前の2020年3月27日、お話を伺ってきました。
(2020年3月27日 取材)


— 今回の魚トの神立川(2号店)のコンセプトを教えてください 。

  

日本人の文化というか、魚と日本酒ですね。魚って美味しい、日本酒って美味しいっていうのを拡げたい。そういう場所にしていきたいですね。

— そこは府中の1号店と同じ気持ちですね?

そうです。

 

— 1号店との違いっていうと、今回はどこにありますか?

 

府中では厨房の大きさの関係でできなかった料理ものですね。会社帰りにふらっと寄って楽しんでもらえるような、おばんざいを増やしていきたいっていうのが一つあります。あとは、もうちょっとゆったりとした空間でくつろいでもらえる店をこの立川ではやりたいなと思ってます。

 

— もともと料理に入ったきっかけと、これまでの経緯を聞かせてください。

 

小さいころから母親の料理を手伝うのが好きだったっていうのがありまして。

僕が料理の世界に入ったのって、30歳からなんです。それまではバーテンをしたり洋服を売ったりとか。

正直、自分がやりたいことを探してたんですけど、30歳を目処に決めるっていう思いは持ってましたので、

小さいころの記憶を思い出して、料理が自分のやりたいことなんだなって。地元が沼津っていうのもあるんですけど、お魚が好きで。

 

それで飲食の世界に入りたいと思ったけど、どういうふうにやったらいいのか、どういうふうに修行したらいいのかもわからなかったんです。

そのとき、こんな美味しい魚があるんだって感動を教えてくれたのが「魚真」っていう店で。ここで働きたいって思って、すぐ入りましたね。それが始まりです。

 

— 30歳からのスタートだと料理の世界では遅いですよね? 相当やられましたか?

  

そうですね。

ちょっと恥ずかしい話なんですけど、新人のころは店に泊まって自分で魚を買って捌いてみたりとか。

  

始めたのが遅いっていうのは自分でもわかっていたので、そのハンディを取り戻すにはどうしたらいいかっていったら、そういうことをしないと勝っていけないっていうのもわかってたので。

みんなが帰ってから夜中、けっこう自分でこっそりやってましたね。

   

— そのあとどれくらい修行されたんですか?

 

かれこれ7年ですか。

幸いそうやってきたおかげか、2年ちょっとくらいで副店長をやらせてもらって。

数字のこととか、お客さんの対応とか、スタッフの教育とか、そういうこともぜんぶ学ばせてもらったので。

— そして37歳で独立?

  

年齢でいったら36歳。37歳ちょっと前かな。

妻も「魚真」で働いてて、そこで知り合って結婚したんですけど、独立して最初は夫婦で始めて。

ありがたいことに売り上げも順調に伸びて、そこでほんといろんな方と出会って。

  

そんななかでお店の常連さんが2人ほど、「うちで働きたい」って言ってくれて。

それどうしようかっていったら、1店舗でこんなにスタッフ抱えられないし、2店舗目を出そうって。

  

— そこが今回の2号店を出したいちばん大きな理由なんですか?

 

そうですね。あとはまあ、多摩地区にすごく魚が美味しい店っていうのがあんまりないっていうのがあって。もっと美味しい魚をこの多摩地区に広めたいっていうのもあって。

  

去年(2019年)の11月に法人化したんですけど、会社にしたのならスタッフが楽しく働ける環境にしたいなと。料理の世界っていろいろあるんですけど、もっと働くことを楽しくして、ちゃんと学べる会社にしていく、お店にしていくっていう気持ちで。

 

— 独立する人の多くは、自分なりの想いがあるから自分のお店をつくると思うんですけど、

それでも経営がうまくいかないっていうのはあるじゃないですか。

「料理が美味しい」だけじゃ勝てないじゃないですか。

 

勝てないですね。

 

— 北野さんは、どこが大事だと思いますか?

  

いちばんは人を大事にする気持ちじゃないですかね。

お客さん、仲間、業者さん、誰に対しても大事にするっていう気持ちが人を呼ぶと思うんですけど、人を呼べばやっぱりまたその人が人を呼んでくれて、いろんな力になると思うので。

正直、僕一人だと何もできないんです。でも、そういう気持ちで接していれば、そういうふうに返してくれるんじゃないかな。たぶんそうだとは思うんですけどね。

 

— 結局そこなんですね。

内装施工で山翠舎を選んだのはどういう理由で?

  

それはやっぱり人ですね。もちろん作られているお店の雰囲気も好きなんですけど、やっぱり人柄ですね。(現場監督の)岸さんとか(デザイナーの)山岸さんとか。上の方も、みんな優しいというか。

結局は人柄じゃないですか。料理と(設計施工の)職人さんとは共通するものがあるんじゃないかなあ。

  

— 単にドライな内装施工の会社じゃないということですね?

 

そうですね。自分がやろうとしていることと同じ匂いがしたので、(一号店に続いて)今回もっていうのでお願いしましたね。他の会社はいっさいあたらなかったですね。

— 今回の内装でこだわった部分はどこですか?

 

立地的に駅近といえど空中階なので、入り口を見て入る人なんて絶対いない。

実際に上に上がってみて、扉を開けた時の感動と、目の前の冷蔵庫には魚がある、その隣の壁には日本酒がある。そういう空間を作りたくて、入り口のところはこだわりました。

 

 

あとカウンターは料理を作る側がお客さんを上から見下ろす目線になるのが嫌で、なるべく同じ目線で会話したいっていうのがあって、最初の設計案より10㎝くらい下げてもらったりとか。

— これからどういうお店に育てていきたいですか?

 

 

目標は、立川でいちばんいい店を作りたいっていう。料理とかそういうのもあるんですけど、お客さんとスタッフが仲のいいお店。必ず「いいお店だったね」って帰るときに思ってもらえるような、そういうおもてなしができるお店を目指していきたいですね。

  

— 今日はありがとうございました。