魚貝ののぶ 土田さんに開店の際のお話をお伺いしました。




ーー独立のきっかけはどんなことですか?


飲食業界に長く居て経験は16,7年位でしょうか。基本的に厨房で料理を作る方でした。

漠然と独立したいとは思っていましたし、キャリアを積み上げていった中で、あとは独立しかない、という流れでしょうか。

年齢的にも40歳という節目を迎え、最初は毎月一万円、三万・五万と増やしてコツコツと積み上げてきた独立資金など、

いろいろと条件が揃ったと考えることができたからですね。

2016年2月に開店することができました。




ーー店舗物件はどのように探されましたか?


東京は築地で仕入れた魚を配送できる範囲という大きな枠でまず考えて、

地元の不動産屋・ネットの不動産屋を片っ端から登録しましたけど、なかなか厳しかったですね。

競合し、負け続けました。15,6軒かそれ以上でしょうか。

ただ、自分の地元である高円寺の不動産屋には「いい物件無いですか?」的にちょこちょこ顔を出していました。

ご夫婦でやっている地場の不動産屋で、ここで負けましたあそこでも負けました、みたいな愚痴も含めていろいろと話しをしていました。

ある時「表に出す前の物件なんだけど、予算オーバーになるけどこれはどう?」と見せてくれた物件が今の物件です。

クローズドな物件でも、なんだかんだと三社くらい申込みが来ていましたが、不動産屋さんが大家さんに口添えしてくださっていて、

当の大家さんも「どこでも見るようなチェーンのお店が入居するよりは、頑張る個人経営のお店を応援したい」と前向きになってくれました。

物件探しは、通った数と経験値。私みたいに最初の開店の方は、お金で解決できない以上は足で稼ぐしかないんだと思いますし、

結果的に良い物件に出会えました。




ーー山翠舎との出会いはどこですか?


業界雑誌の特に独立開業向け特集とかは全て読み込んでいました。

「料理通信」の独立開業者向け特集で、内装のお金や運転資金開業資金など詳しく書いてある特集記事で、

いいなと思った物件が山翠舎の物件でした。
雑誌で見て初めて知ったお店でしたが、西荻窪の「煮込みやまる。」さん、個人的にドンピシャで理想的なお店づくりでした。

休みの日の度に何度も"まる。"さんには通いましたね。行って呑んで帰って、という静かなお店。

山翠舎には「"まる。"と全く同じような店を作りたい」と言うようなオーダーをしたほどでした。

実際には物件決まってない時でしたが、山翠舎が行っている無料説明会に行き相談、物件決まってから改めて本腰を入れて相談しました。




ーーお店づくりにむけて行ったことは?


いわゆる「繁盛店巡り」をしました。

個人的に山翠舎にお願いしようと決めていたので、山翠舎が設計施工したお店巡りになります。

40-50店は回ったんじゃないでしょうか。

例えば壁紙をどうしましょうという話ひとつでも、サンプルだけ見ても正直わからないし伝わりにくいんですね。

でも、あそこのお店のあんな壁紙でお願いしますといたオーダー、ここはあの店のように、ここはその店のように、

という指示が、山翠舎施工店舗の例を出すことでスムーズに意思疎通が出来ました。




ーー相見積もりはとりましたか?


やはり最初は相見積もりとろうと思ったのですが、店の雰囲気づくりでは直感的に山翠舎に決めてしまっていたので、

時間の無駄になるかなと思い、とりませんでした。

そこに時間やパワー使うくらいならもう一軒見に行こう!という感覚でしたね。

他にも古材や家具古民家風の提案をしているところにも気にはなった時もありました。

ただ、全体的なバランスは山翠舎の施工が自分に合ってるんだな、と、改めて思いました。




ーー開店当初のご予算と実際の設計施工について。


最初は雑誌の記事で気に入っていた施工店の予算を参考にお話をしました。

提示いただいた見積もりはそこから大きな開きが合ったのですが、やりたいことを全部入れると

どうしても金額的には大きくなってしまうことも同時に理解していました。

その見積もりをベースにしつつ、トイレは既存のままにする、ここをやらない、といった感じで予算を下げていきました。

予算をどう折り合いをつけていくかという相談の中で、山翠舎のデザイナーから古木の柱を減らした提案をしてきたんです。

金額ベースで話をするとどうしてもそうなってしまいますよね。

ただ、「そこはしっかりと古木の柱を付けたい。そこを減らすと山翠舎にお願いする意味が無くなっちゃうじゃないか」

と思いまして、削りませんでした。

山翠舎は長野県大町に古木を貯蔵している倉庫工場があります。

開店前という限られた時間の都合で結局その時は行けなかったのですが、今私がその時の同じ立場だったら、

絶対見に行って自分の目で選びたいとあとから行って思いました。

それ位、古木の柱に拘りがありましたし、大町工場の在庫の凄さは後で行ってみてわかりました。




ーー開店後、お客様の評判は?


お客様の評判、非常に良いですね。落ち着く感じの木材の使い方が、思っていたとおり、いや、思っていた以上でした。

古材を使ってスタイリッシュにするお店も多いと思うんですが、カッコいいのは疲れちゃうんですよ。そこのバランスがとても良かったです。

トイレの入り口脇に二本の柱の古木の柱を作ってもらったんですが、この存在感がよかったんだと思います。




ーー当初の予想と実際とはどうですか?


計画的にやる方ではないんですが、なんだかんだで順調にお客様は来てくださっていますね。

世間一般のビッグイベントで影響はあまりないのは比較的計算しやすいのかもしれません。

例えばオリンピックやサッカーワールドカップでもあまり影響はありませんでした。

ありがたいことに、とりあえず毎日満席にはなりますが、問題はその先。

コアタイムにはいいお客さんは来るが、それを外したときのお客さま。

ふらりと迷い込んできちゃったようなお客さんが来るケースもどうしてもあるわけです。

その時どううまく案内できるか、うちの店らしいご飯を食べて欲しいし、知ってほしい。そこをどうするか、といった課題もあります。

高円寺自体は若い店主も多いので、店を作り込んでいるところが少ないのではないでしょうか。

繁盛するお店のあるべき姿は、常連をしっかりつなぎとめて、

かつ新規もウェルカムな姿とバランスをどう両立するかと思っていますし、そこは今でも模索しています。